LAST WEEK MARKET─26.8.10〜14

LAST WEEK MARKET
SS&P500は7,800台、しかし米10年債は動かなかった 先週の株高を作ったのは金利ではなく「期待」である
先週、S&P500は史上初めて7,800を超えました。しかし同じ週に、小売売上高は前月比−0.6%(予想+0.1%)と発表されています。VIX指数は約14.5と低位で安定しており、市場はリスクオフの気配を見せていません。
8月3日〜7日の週、28年ぶりの日米協調介入と米雇用統計ショックにより、ドル円は155円台、日経平均は65,606円まで下落しました。しかし先週(8/10〜14)、市場はその下げをほぼ全戻ししました。ドル円は158〜159円台へ、日経平均は68,713円へと回復しています。
市場が株高の理由として挙げるのは「CPIの鈍化による利上げ回避観測」です。しかし、その鈍化の中身を分解すると、別の主語が浮かび上がります。
MSマーケット総研が注目する本質はこうです。先週の株高を作ったのは、金利ではなく金利が下がるだろうという期待だけです。実際に米10年債利回りは動いていません。分母に下げ余地がないまま株価だけが最高値にあるなら、次に来るのは「良い決算が出ても上がらない」局面だと考えています。

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米国株
上昇しているのは株だけ、債券は動いていない S&P500最高値・ダウ週間マイナス、この「反応の非対称」が示すもの
週の着地を確認します。S&P500は7,785(週間+0.65%)で3週連続の上昇。週中には史上初の7,800台に到達し、最高値を更新しました。ナスダック総合も26,729へ上昇。ラッセル2000は8月14日に+0.54%で最高値を更新しています。
一方で、NYダウ(53,732)だけは週間ベースでマイナスとなりました。上昇の牽引役がAI・半導体とスモールキャップに偏り、オールドエコノミー側は置いていかれているという、需給の歪みがここに見えます。
さらに注目すべきは債券市場の沈黙です。米10年債利回りは8月10日の4.662%から8月14日の4.643%へ、ほぼ動いていません。株がこれほど熱狂しても、債券は利下げも景気後退も織り込みにいっていません。「株・債券・為替のうち、最も嘘をつきにくいのは債券である」という原則に立ち返る必要があります。
VIX指数は約14.5で低位安定。8月14日当日は主要3指数がいずれも小幅安(S&P −0.2%、ナスダック −0.3%、ダウ −0.2%)で引けていますが、楽観の水準としてはかなり高いところにあると言わざるを得ません。
来週以降の焦点は、「悪い数字で株が上がる」局面から「良い数字でも株が上がらない」局面への移行です。金利に下げ余地がない以上、株価を支えるのは業績しかありません。そして秋相場は、Q3実績と同時に第4四半期のガイダンスが出てくる季節です。

用語解説:PER拡大の余地
株価
企業収益(EPS)× 何倍で買われるか(PER)
株価は上の式で決まります。金利が下がる局面ではPERが切り上がり、好決算と合わせて二段ロケットになります。しかし金利が動かない局面では、好決算はEPSぶんしか効きません。すでに株価が先回りしていれば、良い決算が出た瞬間に「出尽くし」で売られます。
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為替相場
ドル円159円台、160円を窺う地合いへ 円安の終わりを決めるのは日銀ではなく、FRBである
前週の協調介入と雇用統計ショックで155円台まで振れたドル円は、先週158.60〜159.46円のレンジへと全戻ししました。ユーロ円は183.97円、ポンド円は215.39円と高値圏。ユーロドルが1.15台で膠着する中、クロス円主導の円全面安が進んでおり、ドル全面高ではない点が特徴です。
28年ぶりの協調介入から2週間で、ドル円はほぼ元の水準に戻りました。「介入は時間稼ぎ」という本欄の見立ては、結果として維持された形です。ただし、当局の次の構えは引き続き観測点となります。
日銀の9月または10月の利上げ観測は、既に相場に織り込み済みと考えており、日銀が動いても円安が終わらないなら、その終わりを決めるのはFRB側の米金利低下しかありません。しかし先週、その米10年債利回りは動きませんでした。
160円という節目が視野に入っています。到達時に何が起きるかではなく、到達時の当局姿勢と日米金利差の方向性を見ること。それが次の局面を読む鍵となります。

用語解説:実質金利
名目金利からインフレ率を引いたものです。米国はFF金利3.50〜3.75%に対しCPIが前年比3.4%で、実質金利はほぼゼロ近傍。FRBは名目では引き締めていますが、実質ではほとんど締めていません。この状態が続く限り、金利差だけを見て円安の終わりを測るのは困難です。
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日本株
日経+3,107円・TOPIX最高値 二重エンジンに見えるが、実は一本の吊り橋である
日経平均の8月14日終値は68,713円。前週末比+3,107円(約+4.7%)の大幅高で、2週連続の上昇となりました。ザラ場では69,500円を超える場面もあり、TOPIXも2週連続で週末終値ベースの最高値を更新しています。
牽引役はAI・半導体関連の戻りですが、加えて出遅れ銘柄へも資金が拡散しています。TOPIXの最高値更新は、株式市場から資金が抜けていないという需給の強さを裏付けています。
これを「AI・半導体と円安の二重エンジン」と呼ぶのは早計かもしれません。円安の源泉は日米金利差、すなわち米金利にあります。AI・半導体の評価も割引率=米金利に依存しています。2つのエンジンは、実は「米金利」という同じ綱に吊られているのです。

Point!エンジンは何本あるか
エンジンが2本あると信じている相場と、実は1本しかない相場では、故障時の落ち方が違います。円安と株高が同じ変数に依存しているなら、分散はできていません。「日本株と外貨資産を両方持っているから分散できている」という前提を、一度点検する価値があります。
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\ MS総研の視点!/
3.4%と2.5%、その0.9ptの正体 ディスインフレの燃料は「需要破壊」だった
7月CPIはヘッドライン+3.4%(前月3.5%)、コア+2.5%(前月2.6%)といずれも予想通りの着地でした。ただし、住居費+0.1%が月次上昇分の約2/3を占めている点は見過ごせません。
ヘッドラインとコアの乖離0.9ptはエネルギー起因です。単月ではエネルギー−1.5%(ガソリン−2.9%)が押し下げに効きました。しかし前年比では依然+14.7%です。WTIは81.71ドル。コアだけを見る投資家は、原油のリスクを見落としています。
7月PPIは前年比+4.7%。予想以上に減速しましたが、水準としては高く、川上の圧力は消えていません。
一方で需要側の3指標は警戒信号を点灯させています。小売売上高−0.6%(予想+0.1%)、ミシガン大消費者信頼感51.0(前月55.2)、新規失業保険申請20.9万件(予想20.2万件)。3つが同じ方向を向いています。「物価が下がったのではなく、買えなくなった」という因果の書き換えが必要です。
市場が好感した「利上げ回避」は需要破壊の副産物です。割引率(分母)は先に動きますが、企業収益(分子)は遅れて動きます。これは矛盾ではなく順序です。私たちはプロでもアマでもなく、ただ相場のロジックを最後まで追うストラテジストとして、この順序を見続けます。
来週の日本株の見極めPoint!

\Focus Point!/
今週の観測点 原油・160円・ジャクソンホール、この3つで仮説を検証する

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先週の相場が示したのは答えではなく問いです。私たちは以下の3つの観測点を設定し、仮説を検証していきます。
観測点①|原油(WTI 81.71ドル)。上抜けるかどうか。エネルギー前年比+14.7%が動く起点です。WTIが85ドルを明確に上抜けた場合、「ディスインフレは条件付き」という本欄の仮説は現実になります。逆に75ドル割れが定着すれば、持続性を上方修正します。
観測点②|ドル円160円。到達時の当局姿勢と、日米金利差の変化方向を見ます。160円到達時に米10年債利回りが4.6%台を維持したままなら「金利差主導」の読みは維持されます。金利が低下しているのに円安が進むなら、金利差以外の要因が主役に交代した合図であり、枠組みの組み替えが必要です。
観測点③|ジャクソンホール会議(8月27日〜29日、ウォーシュ議長講演は28日午前)。テーマは決済・金融イノベーションですが、市場が聴くのは物価観です。講演で「利上げ再開の可能性」に明示的に言及があれば、先週のディスインフレ相場は一時的なものだったことになります。
先週の相場は、良いニュースの顔をした悪いニュースだったのかもしれません。これを見抜けるかどうかは、情報量ではなく読み方の構造を持っているかどうかです。
\ 今週のマーケット注目Point!/
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