LAST WEEK MARKET 26.07.13〜17


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LAST WEEK MARKET
CPI鈍化でもAI・半導体株は失速。NASDAQは週間2.9%安、日経平均は調整局面入り、原油だけが地政学リスクを吸収した「選別型リスクオフ」の一週間。
S&P500は週間▲1.6%/NASDAQは▲2.9%/SOX指数は週間約10%安/日経平均は17日に4.03%安の64,141.12円/ドル円は162円台を維持/WTIは82.49ドル、週間約16%高―
2026年7月13日〜17日のマーケットは、インフレ鈍化という材料よりも、AI・半導体株に積み上がった期待とポジションの巻き戻しが優先された一週間でした。週初は米国とイランの軍事衝突再燃、ホルムズ海峡を巡る供給不安を背景に、原油が急騰。米国株とアジア株では半導体を中心にリスク回避の売りが広がりました。
14日に発表された米6月消費者物価指数は、総合指数が前月比0.4%低下し、前年同月比では3.5%へ鈍化。食品とエネルギーを除くコア指数も前月比横ばい、前年同月比2.6%となり、市場予想を下回りました。発表当日は米長期金利が低下し、S&P500とNASDAQは反発しましたが、好材料による上昇は翌日以降へ続きませんでした。
週後半になると、AI投資の収益化、半導体株の割高感、レバレッジを伴うモメンタム取引への警戒が一気に表面化しました。SOX指数は週間で約10%下落し、6月高値からの下落率は20%を超えて弱気相場入り。17日の米国市場はS&P500が1.01%安、NASDAQが1.40%安、ダウが0.77%安となり、主要3指数はいずれも週間で下落しました。
日本市場にも半導体株の世界的な調整が波及し、日経平均は17日に一時6%超下落。終値は4.03%安の64,141.12円となり、6月25日の史上最高値から11.3%下落して調整局面入りしました。一方、ドル円は米インフレ鈍化後も162円前後にとどまり、円は約40年ぶりの安値圏から抜け出せていません。今週は「金利低下なら株高」という従来の単純な構図が崩れ、企業の利益回収力、ポジションの偏り、原油高による将来インフレが同時に問われました。

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米国株
CPI鈍化による反発は1日で終了。NASDAQは週間2.9%安、SOXは弱気相場入り──AI投資の「規模」から「回収力」へ評価軸が変化
今週の米国株は、地政学リスクによる下落で始まり、インフレ鈍化を受けて一度は反発したものの、最終的にはAI・半導体株の売りが市場全体へ広がりました。13日は米国とイランの軍事衝突激化、ホルムズ海峡を巡る供給不安、原油急騰を受けて、ダウが0.26%安、S&P500が0.79%安、NASDAQが1.55%安。特に半導体株への売りが指数を押し下げました。
14日に発表された米6月CPIは、総合指数が前月比0.4%低下、前年同月比3.5%上昇。コア指数は前月比横ばい、前年同月比2.6%上昇となり、インフレの減速が確認されました。米長期金利が低下すると、S&P500は0.38%高、NASDAQは0.90%高となり、半導体株にも買い戻しが入りました。大手銀行の好決算も支援材料となり、一時は週初の下落を取り戻す動きが見られました。
しかし、重要なのは好材料に対する上昇が持続しなかったことです。16日はS&P500情報技術セクターが1.8%安、SOX指数が4.3%安。17日も半導体株の下落が3日連続で続き、S&P500は1.01%安の7,457.69、NASDAQは1.40%安の25,520.24、ダウは0.77%安の52,146.42で取引を終えました。週間ではS&P500が1.6%安、NASDAQが2.9%安、ダウが0.9%安となっています。
SOX指数は週間で約10%下落し、6月高値から20%超下落して弱気相場入りしました。AI・半導体関連株は年初来で大幅に上昇してきたため、単なる業績の良し悪しではなく、株価にどれだけ高い期待が織り込まれていたかが問題になっています。AI向けデータセンター、半導体、電力設備への投資額が増加しても、それが売上、利益率、フリーキャッシュフローへ十分に変換されなければ、高いバリュエーションを維持できません。
今週は、中国のAI企業による新しい大型モデルの公開、米AIモデルの開発遅延、AI設備投資の高コスト化、モメンタム株へ積み上がったレバレッジ取引への警戒が重なりました。ヘッジファンドなどが半導体・AI関連株のポジションを縮小するなか、下落が半導体だけでなく市場全体へ波及した点には注意が必要です。
ただし、小型株のRussell2000は週間0.5%安にとどまり、NASDAQより下落率が小さくなりました。これは株式市場全体から資金が完全に流出したというより、AI・半導体や大型グロース株へ集中していた資金が巻き戻され、他セクターへ移動している可能性を示します。来週はアルファベット、テスラ、インテルなどの決算を通じ、AI設備投資が実際の収益へどれだけ変換されているかが試されます。決算内容だけでなく、好材料に対して株価が反応できるかを確認する必要があります。

用語解説:弱気相場入り
一般に、直近の高値から20%以上下落した状態を「弱気相場入り」と呼びます。必ずしも長期的な下落相場の開始を意味するわけではありませんが、市場参加者の評価基準やポジションが大きく変化した可能性を示します。SOX指数は6月高値から20%超下落し、AI・半導体株の期待修正が一時的な押し目の範囲を超えたことを示しています。
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為替相場
ドル円は162円台を維持。CPI鈍化でも円高は限定的──米金利低下より「日本円を買う理由の弱さ」が勝った一週間
今週のドル円は、米インフレ鈍化によるドル売りが入りながらも、162円台を中心に高止まりしました。週初13日は米国とイランの軍事衝突再燃を受け、安全資産としてドルが買われる一方、原油価格の急騰が日本の輸入負担を増加させるとの見方から円売りも強まりました。ドル円は162円台前半から後半で推移し、円は約40年ぶりの安値圏から抜け出せませんでした。
14日の米CPIは市場予想を下回り、米国債利回りとドル指数は低下しました。ドル円も一時162.24円前後まで下落しましたが、値幅は限定的でした。通常であれば、米金利低下は日米金利差の縮小を通じて円高要因になります。しかし今回は、米金利が下がっても円を積極的に買う動きが広がらず、ドル円は162円台を維持しました。
背景には三つの要因があります。第一に、日本の実質金利が依然として低く、円を保有する金利面の魅力が乏しいこと。第二に、原油高が日本の貿易収支と物価へ悪影響を与える可能性があること。第三に、円キャリートレードや投機的な円売りポジションが解消されず、市場構造そのものが円安方向へ傾いていることです。
17日のドル円は162.44円前後で推移し、月初につけた約40年ぶりの円安水準である162.84円に近い位置で週を終えました。ドル指数は週間で0.2%下落しており、主要通貨全体ではドル高が進んだわけではありません。それでもドル円がほとんど下がらなかったことは、今週の値動きが「ドルの強さ」よりも円固有の弱さによって形成されたことを示しています。
政府・財務省からは為替介入を警戒させる発言が続きましたが、市場は発言だけでは円売りポジションを大きく縮小していません。介入警戒が強まると一時的に円高へ振れる可能性はあるものの、持続的な円高には、日銀の金融政策、国内金利、貿易収支、海外投資資金の流れといったファンダメンタルズの変化が必要です。
来週は、162.84円前後の直近高値を上抜けるか、政府が介入警戒の表現を一段と強めるかが焦点です。米国ではインフレ鈍化で早期利上げ観測が後退する一方、原油高が将来の物価上昇圧力として残ります。ドル円が米金利低下でも下がらない状態が続けば、163円台への上昇リスクが高まります。反対に、実際の為替介入、日銀の政策修正、投機筋の円売り解消が重なれば、短期間に数円規模で円高が進む可能性があります。

用語解説:円キャリートレード
低金利の円で資金を調達し、米国株や高金利通貨など、より高い収益が期待できる資産へ投資する取引です。日米金利差が大きく、市場の変動率が低い局面では拡大しやすくなります。一方、円高や株価下落が起きると、投資家がポジションを決済するため円を買い戻し、円高とリスク資産下落が同時に加速することがあります。
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日本株
日経平均は17日に4.03%安、6月高値から11.3%下落して調整局面入り──半導体集中の弱点が一気に表面化
今週の日本株は、世界的な半導体株の調整と中東情勢の緊迫化を受け、大幅に下落しました。特に週後半は、米国、台湾、韓国などで半導体株への売りが連鎖し、値がさの半導体・AI関連株が日経平均を大きく押し下げました。
16日の日経平均は、米半導体株安と韓国KOSPIの急落を受けて3%近く下落。17日は売りがさらに加速し、一時6.18%安まで下げました。終値は前日比4.03%安の64,141.12円。6月25日につけた史上最高値72,366.34円からの下落率は11.3%に達し、一般に高値から10%以上の下落を指す「調整局面」に入りました。
TOPIXも17日に2.72%安の3,919.21となりましたが、日経平均より下落率は小さくなっています。この差は、日経平均が値がさの半導体・ハイテク株の影響を強く受ける指数である一方、TOPIXは銀行、商社、内需、バリュー株を含む幅広い銘柄で構成されているためです。今週の下落は日本株全体が同じ強さで売られたのではなく、半導体・AI関連へ集中していた資金が巻き戻された影響が大きいとみられます。
また、原油価格の急騰も日本株の重荷となりました。日本はエネルギーの多くを輸入に依存しているため、原油高は企業の輸送費、電力費、原材料費を押し上げます。ドル円が162円台にある状態で原油価格まで上昇すると、円換算した輸入コストが二重に増加します。製造業、運輸、航空、小売などの利益率には逆風となる一方、資源開発や商社など一部業種には追い風となります。
17日は台湾や欧州でも半導体関連株が大きく下落し、世界的なAI・半導体株のポジション調整が日本市場へ波及しました。国内固有の悪材料だけで下落したわけではなく、海外投資家が世界共通で保有していた半導体株を一斉に縮小した影響が大きいと考えられます。そのため、日本企業の業績が直ちに悪化したと断定するのではなく、世界的なポジション調整と企業固有の業績変化を分けて評価する必要があります。
来週は、日経平均が64,000円前後で下げ止まるか、半導体株の売りが銀行、商社、内需株へ広がるかが焦点です。日経平均だけが弱く、TOPIXや値上がり銘柄数が持ちこたえるなら、半導体集中の修正にとどまる可能性があります。反対に、TOPIXも下落を加速させ、幅広い業種で売りが続く場合は、セクターローテーションではなく全面的なリスクオフへ移行したと判断する必要があります。

Point!「調整局面」と「弱気相場」の違い
一般に、直近高値から10%以上下落すると「調整局面」、20%以上下落すると「弱気相場」と呼ばれます。日経平均は6月25日の最高値から11.3%下落し、調整局面に入りました。ただし、この基準は値幅を分類する目安であり、その後の上昇・下落を保証するものではありません。売りが特定セクターに集中しているか、市場全体へ広がっているかを確認する必要があります。
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原油(クルードオイル)
WTIは82.49ドル、ブレントは88.10ドル。週間約16%高──供給途絶の「可能性」が実需データを上回った一週間
今週、主要資産のなかで最も強い上昇を記録したのは原油でした。米国とイランの軍事衝突が再び激化し、ホルムズ海峡や紅海を通じた原油・石油製品輸送への不安が拡大。週初から供給途絶を警戒する買いが集中し、WTI原油先物とブレント原油先物はともに急騰しました。
17日の終値は、WTI原油が1バレル82.49ドル、ブレント原油が88.10ドル。週間上昇率はいずれも約16%に達しました。通常、原油価格は世界景気、在庫、OPECプラスの生産方針、米国のシェール生産などで動きます。しかし今週は、現時点の在庫や需要よりも、主要輸送ルートが遮断される可能性を先回りする地政学リスクプレミアムが価格を支配しました。
重要なのは、実際に世界の原油供給が大幅に減少したことを確認してから価格が上昇したのではない点です。市場は、タンカーの運航停止、保険料の上昇、港湾機能の低下、制裁強化、報復攻撃による生産設備の損傷といった複数の経路を通じて、将来の供給量が減少する可能性を織り込みました。現物供給の減少前に先物価格が上昇するのは、コモディティ市場では典型的な動きです。
同時に、原油価格の上昇は株式・債券・為替市場へ波及します。米国ではガソリン価格や輸送コストの上昇を通じ、数カ月後のCPIやPCE価格指数を押し上げる可能性があります。日本では原油高に円安が重なることで、円換算した輸入価格が一段と上昇します。米6月CPIは鈍化しましたが、今回の原油急騰は6月の物価統計には含まれていません。市場がCPI鈍化を素直に好感できなかった背景には、将来のインフレを押し上げる原油高が同時進行していたことがあります。
ただし、原油価格の上昇分すべてが実需の強さを示しているわけではありません。地政学リスクプレミアムは、緊張緩和や停戦協議、航路の安全確保が伝わるだけで急速に剥落する可能性があります。今週のような急騰局面では、投機筋による新規買いに加え、売りポジションを持っていた参加者の損失限定買い戻し、すなわちショートカバーも上昇を増幅します。
このため、今後の原油相場を判断する際は、価格だけを見るべきではありません。上昇と同時に出来高と未決済建玉が増えているのか、価格上昇にもかかわらず未決済建玉が減少しているのかを確認する必要があります。前者は新規資金の流入、後者は既存の売りポジションの解消が中心である可能性を示します。
来週の焦点は、80ドル台で新規の買い手が増えるかです。WTIが80ドル台を維持し、出来高と未決済建玉がともに増加するなら、地政学リスクだけでなく供給不安を背景とした新規資金の流入が続いている可能性があります。反対に、価格が上昇しても未決済建玉が減少するなら、上昇の主因はショートカバーであり、緊張緩和をきっかけに反落しやすい状態と判断できます。
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用語解説:ショートカバー
価格下落を予想して先に売っていた投資家が、損失確定や利益確定のために買い戻すことです。新たな強気投資家による買いではなくても、買い注文として市場へ入るため、価格を急上昇させることがあります。価格上昇と同時に未決済建玉が減少している場合は、ショートカバー中心の可能性があります。
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\ MS総研の視点!/
CPIが鈍化してもAI株が下落した理由──金利ではなく、利益期待とバリュエーションの再計算が始まった
今週の最大の疑問は、米CPIが市場予想を下回り、米長期金利が低下したにもかかわらず、なぜNASDAQと半導体株が下落したのかという点です。一般的に、金利低下は将来利益の現在価値を押し上げるため、成長株にとって追い風です。しかし今週は、その追い風よりも将来利益そのものへの不確実性が大きくなりました。
株価は、企業が将来生み出すと予想される利益やキャッシュフローを、現在価値へ割り引いて計算されます。金利が低下すれば割引率は下がり、同じ将来利益でも理論上の株価は上昇します。ただし、その計算の前提となる将来利益が引き下げられれば、割引率低下の効果は相殺されます。今週のAI・半導体株では、まさにこの再計算が起きました。
AI関連企業は、データセンター、GPU、ネットワーク、電力、冷却設備へ巨額の設備投資を行っています。これまで市場は、設備投資額の増加をAI需要の強さとして評価してきました。しかし投資額が大きくなるほど、減価償却費、電力費、人件費、資金調達費も増加します。AIサービスの利用者や売上が増えても、コストがそれ以上に増加すれば、利益率とフリーキャッシュフローは改善しません。
さらに、低コストのAIモデルが登場し、モデル利用価格の引き下げ競争が進めば、AIの普及には追い風となる一方、サービス提供企業の単価と利益率には下押し圧力がかかります。半導体メーカーにとっても、設備投資が永続的に増え続けるとの前提が崩れれば、将来の売上成長率を下方修正する必要があります。
ここで重要になるのがバリュエーションです。株価収益率や売上高倍率が高い銘柄ほど、遠い将来まで高成長が続くことを前提に価格が形成されています。企業が市場予想を上回る利益を出しても、期待されていた成長率に届かなければ株価は下落します。今週の半導体株下落は、業績が悪化したというより、株価に織り込まれていた期待が高すぎたため、その期待値が引き下げられたと考える方が適切です。
原油高も無視できません。6月CPIは鈍化しましたが、7月の原油急騰は将来のインフレを押し上げる可能性があります。市場は「過去の物価鈍化」と「将来の物価上昇」を同時に評価しています。CPI発表直後に金利が下がっても、原油高が長期化すれば、FRBが利上げまたは高金利維持を続ける可能性があります。成長株にとっては、利益期待の低下と割引率上昇リスクが同時に残ります。
また、今週の下落はセクターローテーションの側面もあります。小型株や一部の金融・景気敏感株は、NASDAQやSOX指数ほど下落しませんでした。これは投資家が株式市場から完全に撤退したのではなく、AI・半導体株へ集中していた資金を他のセクターへ移している可能性を示します。
MS総研では、今後のAI相場を判断するために、次の4点を重視します。第一に、AI関連売上の成長率。第二に、設備投資増加後の営業利益率。第三に、フリーキャッシュフロー。第四に、AI設備の稼働率です。設備投資額の大きさだけでは、株価の上昇を正当化できません。投資した資金がどれだけ早く利益へ戻るかが重要です。
結論として、今週は「CPIが下がったのに株が下がった」のではありません。CPI低下による割引率の改善より、AI投資の収益性、将来利益の不確実性、割高なバリュエーション、原油高による将来インフレの方が重く評価されました。今後の焦点は、金利の方向だけではなく、企業が巨額投資を利益へ変換できるかです。AI相場は、設備投資の規模を競う段階から、投資回収力を比較する段階へ入ったと考えます。


\Focus Point!/
その上昇は新規買いか、ショートカバーか──価格・出来高・未決済建玉を同時に読む

急落後に価格が大きく反発すると、「大口の買いが入った」「底打ちした」と判断したくなります。しかし、先物市場では価格上昇の原因が新規買いとは限りません。売りポジションを持っていた参加者が買い戻すショートカバーでも、価格は同じように上昇します。両者を区別するためには、価格だけではなく、出来高と未決済建玉を同時に確認する必要があります。
- 価格上昇+出来高増加+未決済建玉増加──新しい売買契約が増えながら価格が上昇しています。新規の買い手が市場へ入り、その反対側で新規売りも成立している状態です。上昇トレンドへ新規資金が流入している可能性が高く、ショートカバーだけの上昇より持続性を期待できます。
- 価格上昇+出来高増加+未決済建玉減少──既存の売りポジションが買い戻され、契約そのものが解消されています。典型的なショートカバーです。上昇速度は速くなりやすい一方、新規買いが少なければ、売り方の買い戻しが一巡した後に上昇が止まる可能性があります。
- 価格上昇+出来高減少+未決済建玉減少──参加者が減少するなかで価格だけが上昇しています。薄い流動性のなかで売り方が撤退している可能性があり、上昇の信頼性は低くなります。急反発に見えても、新規資金の裏付けが乏しい状態です。
- 価格下落+出来高増加+未決済建玉増加──新規の売りポジションが増えています。単なる利益確定ではなく、下落方向へ新しい資金が入っている可能性があります。下落トレンドの継続を警戒する組み合わせです。
ただし、未決済建玉だけで買い手と売り手の方向を完全に判断することはできません。先物取引は必ず買い手と売り手が一組で成立するため、未決済建玉の増加は新規契約の増加を示しますが、どちらが主導したかは価格変化や注文フローと組み合わせて判断します。
さらに、CFTCが公表するCommitments of Traders、いわゆるCOTレポートを確認すると、投機筋、商業業者、資産運用会社などのポジション変化を週次で把握できます。原油価格が上昇するなかで投機筋のネットロングが増えていれば、新規の強気ポジションが形成されている可能性があります。反対に、ネットショートが減少しただけなら、ショートカバーの影響が大きいと判断できます。
株価指数でも基本的な考え方は同じです。急落後にNASDAQや日経平均が反発しても、先物の未決済建玉が減少し、現物市場の出来高が少なく、値上がり銘柄数が限定されているなら、売り方の買い戻しによる上昇の可能性があります。反対に、未決済建玉、出来高、値上がり銘柄数が増加し、複数のセクターへ買いが広がれば、新規資金による上昇と判断しやすくなります。
今週の原油急騰や、今後起こり得る半導体株の急反発を分析する際も、この組み合わせが重要です。価格だけを見れば、ショートカバーも新規買いも同じ上昇に見えます。しかし、未決済建玉を確認すれば、市場に新しいリスクマネーが入ったのか、既存ポジションが閉じられただけなのかを切り分けることができます。
結論として、底打ちや上昇継続を判断する際は、①価格、②出来高、③未決済建玉、④市場の広がり、⑤CFTCポジションを確認します。価格上昇だけでは「本物の買い」とは判断できません。上昇と同時に未決済建玉と出来高が増え、市場全体へ買いが広がって初めて、新規資金による持続的な上昇の可能性が高まります。
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※監修:MSマーケット総合研究所
よくある質問|FAQ
米CPIが鈍化したのに、なぜNASDAQと半導体株は下落したのですか?
CPI鈍化による金利低下は成長株にとって追い風ですが、今週はAI設備投資の収益性、半導体株の割高感、将来利益への不確実性がより強く意識されました。割引率が下がっても、将来の利益予想が引き下げられれば株価は下落します。AI相場の評価軸が、投資額の大きさから利益回収力へ変化したと考えられます。
日経平均が調整局面入りしたのは、日本株全体が弱くなったからですか?
日本株全体が同じ強さで売られたとは限りません。日経平均は値がさの半導体・ハイテク株の影響を強く受けます。17日は日経平均が4.03%下落した一方、TOPIXは2.72%安にとどまりました。半導体へ集中していた資金の巻き戻しが、日経平均の下落を増幅したと考えられます。
価格上昇がショートカバーか新規買いか、どう見分けますか?
価格、出来高、未決済建玉を同時に確認します。価格上昇とともに出来高と未決済建玉が増えていれば、新規資金が入っている可能性があります。価格が上昇しても未決済建玉が減少している場合は、既存の売りポジションを買い戻すショートカバー中心の可能性があります。
著者
MSマーケット総合研究所
米国株・コモディティストラテジスト
ジョージ・スミス

【専門領域】
米国株市場
コモディティ市場


