原油$90へ?イラン戦再燃と停戦崩壊の衝撃

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6月17日に成立したはずの米国とイランの停戦覚書は、わずか3週間で崩壊しました。イランがホルムズ海峡で商船3隻(カタール関連のLNG船、サウジアラビア関連のタンカーなど)を攻撃したことを受け、米中央軍は7月7日、イラン国内80カ所以上への再攻撃を実施。イラン革命防衛隊(IRGC)も即座に反撃し、バーレーンとクウェートの米軍関連拠点85カ所への報復攻撃を発表しました。トランプ大統領はNATO首脳会議の場で「停戦は終わった」と明言しています。

原油市場はすでに反応しています。ブレント原油は一時7%近く上昇して1バレル78ドル台まで急伸し、WTIも73〜74ドル台まで戻しました。ここで押さえておきたいのは、この対立が2月28日に始まった今回のイラン戦争の"再燃"だという点です。開戦直後の3月には、ホルムズ海峡の封鎖懸念から原油は120ドルを超えた実績があります。つまり、90ドル接近という水準は、机上の空論ではなく、この相場がすでに一度通った道であるということです。

Check!|結論

今回の再攻撃は、単発の地政学ニュースではなく、すでに120ドル超えを記録した戦争の再燃です。停戦の枠組みが崩れた以上、原油が再び90ドル接近を試す展開は十分に現実的だと考えます。ただし、トランプ大統領自身が「価格はむしろ下がる」とも発言しており、強気・弱気材料は混在しています。断定は避け、どの条件がそろえば再高騰が本格化するのかを、判断基準として整理します。


※掲載内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。

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何が起きたのか:4カ月続く紛争の"再燃"

まず時系列を整理します。事の発端は2026年2月28日です。米国とイスラエルによるイラン攻撃で、最高指導者ハメネイ師が死亡したと報じられました。イランは即座にホルムズ海峡を事実上封鎖し、3月にはブレント原油が120ドルを超える急騰を記録しています。

その後、6月17日に米国とイランは停戦の覚書(MoU)に署名し、原油価格は徐々に落ち着きを取り戻していました。直近ではWTIが66〜70ドル近辺まで下落し、市場は「戦争リスクの後退」を織り込みつつあったのが実情です。

しかし7月7日、イランがホルムズ海峡で商船3隻を攻撃。米中央軍は同日、イラン国内の防空システム、指揮統制網、沿岸レーダー、対艦ミサイル拠点、革命防衛隊関連の小型艇など80カ所以上に再攻撃を実施しました。米財務省も同時に、一時的に認めていたイラン産原油の販売許可を撤回し、7月17日以降の新規取引を事実上禁止しています。

イラン革命防衛隊(IRGC)はこれに対し、バーレーンの米海軍第5艦隊関連拠点(サルマン港)とクウェートのアリ・アルサレム空軍基地など85カ所への報復攻撃を発表し、米軍の無人機1機を撃墜したと主張しています。トランプ大統領はNATO首脳会議の場で「停戦は終わった」と述べる一方、その後の会見では「本格的な戦争が再開するとは思わない」「タンカーが海峡から出てきており、供給過剰で価格はむしろ下がる」とも発言しており、発言のトーンは一貫していません。

この結果、ブレント原油は7月8日に1バレル78ドル前後で取引され、WTIも73〜74ドル台まで上昇しました。欧米の株式市場にもリスクオフの反応が広がり、米欧の海事情報機関(JMIC)はホルムズ海峡の脅威レベルを「深刻」に引き上げています。

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なぜ「90ドル接近」が現実的なのか

原油価格が「供給量」だけでなく「通れるかどうか」で動く商品であることは、今回の戦争がすでに証明済みです。3月の封鎖懸念だけで、ブレントは120ドル超えまで駆け上がりました。同じ紛争の枠組みが再燃した以上、市場が過去の高値を参照するのは自然な反応です。

今回とくに重要なのは3点です。第一に、米国がイラン産原油の販売許可を撤回したことです。イラン産原油が市場に戻るという供給緩和シナリオは後退しました。第二に、イランが声明だけでなく、実際に米軍関連拠点85カ所への攻撃を実行したことです。これは3月の開戦時と同様の「本気度」を示すシグナルとして、市場に受け止められやすくなります。第三に、トランプ大統領自身が停戦の枠組みを一度「終わった」と明言したことです。外交的な収拾のフタが一度外れた以上、次の一手は読みにくくなっています。

一方で、材料は上振れ方向だけではありません。トランプ大統領は同じ会見で「価格はむしろ下がる」とも述べ、OPEC+はすでに増産に動いており、供給過剰を見込む声も市場には残っています。ドイツ銀行の分析によれば、ホルムズ海峡の船舶通航はすでに正常とは程遠い水準にとどまっており、今回の攻撃が始まる前から海峡は完全には正常化していませんでした。ここに再攻撃・再報復が重なれば、保険料や迂回コスト、護衛体制のコストがさらに積み上がりやすくなります。

日本総合研究所は4月時点の分析で、標準シナリオを1バレル100ドル前後、戦闘再開時のリスクシナリオを150ドルと試算していました。実際に戦闘が再開した以上、このリスクシナリオ側に相場が近づいてもおかしくない局面に入っています。

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原油の再高騰シナリオ

現時点で想定できるシナリオは3つです。

Point!解説|3つのシナリオ

  1. 限定的な報復の応酬にとどまり、外交協議で収拾するケースです。この場合、原油価格は一時的に80ドル前後まで上昇しても、通航正常化の兆しが見えれば上昇分の一部を吐き出しやすくなります。
  2. 今回のような攻撃・報復の連鎖が断続的に続くケースです。これがメインシナリオと考えます。この場合、90ドル接近・維持が現実的なレンジとなり、短期的な急騰と反落を繰り返しながら高値圏を維持しやすくなります。
  3. ホルムズ海峡の実質的な封鎖が再燃し、湾岸産油国の輸出にまで影響が及ぶケースです。この場合、3月に記録した120ドル水準を超え、日本総合研究所が試算した150ドルへの接近も視野に入ります。
シナリオ原油への影響見るべき材料
①限定応酬で収束78〜80ドル前後で反落しやすい追加報復なし、交渉再開、通航正常化、OPEC+増産の継続
②攻撃・報復の連鎖(メイン)90ドル接近・維持タンカー攻撃の再発、対イラン制裁の運用強化、米軍拠点への報復継続
③海峡封鎖・戦線拡大120〜150ドル水準へ再接近海峡封鎖の正式宣言、湾岸産油国への攻撃波及、イランの「圧倒的な対応」の実行

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日本市場への影響:物価、円安、株価に波及

原油高は、日本にとって単なる海外ニュースではありません。第一生命経済研究所の試算によれば、開戦前の2026年2月時点のWTI平均は64.4ドルでした。ここから1バレル90〜99ドル程度まで上昇した場合、上昇率は4〜5割に達し、国内消費者物価を年間ベースで0.6〜0.8%程度押し上げると試算されています。すでに実施済みのガソリン暫定税率廃止や電気・ガス代支援策を組み合わせても、この押し上げ効果を相殺しきれない可能性があります。

さらに、原油高は円安圧力にもつながります。貿易収支の悪化が円売り材料となり、ドル円が上昇すれば輸入物価はさらに上がります。原油高と円安が同時に進むと、国内のインフレ圧力は強まりやすくなります。

株式市場では影響が分かれます。資源関連、商社、石油関連セクターには追い風となる場面がある一方、航空、陸運、化学、電力、小売、外食など燃料費・物流費の上昇を受けやすい業種には逆風です。原油高が米国のインフレ再燃につながれば、FRBの利下げ期待が後退し、グロース株への重しともなり得ます。

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投資家が見るべき確認ポイント

確認すべきポイントは、ニュースの見出しだけではありません。第一に、ホルムズ海峡の船舶通航状況です。タンカー・LNG船が通常通り動いているか、迂回や待機が増えているか、保険料が上がっているか。第二に、米国の追加攻撃とイランの「圧倒的な対応」が実行に移されるかどうかです。

第三に、イラン産原油制裁の運用状況です。7月17日の巻き戻し期限を境に、市場からイラン産原油がどの程度減るかが焦点になります。第四に、米金利とドル円です。原油高がインフレ懸念を再燃させれば米金利は下がりにくくなり、ドル円も下がりにくくなります。

第五に、価格の節目です。78〜80ドル台を維持できるか、90ドル接近が定着するか、120ドル以上への再接近が視野に入るかを、材料と合わせて確認することが重要です。

確認ポイント早見表

  • ホルムズ海峡:タンカー・LNG船の通航が通常通りか
  • 追加攻撃:米国・イラン双方の報復が続くか
  • 制裁:イラン産原油の取引制限が強まるか
  • 米金利:原油高で利下げ期待が後退するか
  • ドル円:円安と輸入物価上昇が連動するか

価格帯の目安

78〜80ドル台:警戒感は残るが、通航正常化で上値が重い水準。

90ドル接近:攻撃と報復が断続的に続く場合の現実的な警戒ライン。

120ドル超:ホルムズ海峡の実質封鎖や湾岸産油国への波及が必要なリスクシナリオ。

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※投資は元本割れのリスクがあります。取引条件・手数料・リスクを必ず確認してください。

結論:予言ではなく判断基準を

今回の米国によるイラン再攻撃とイランの85カ所への報復は、6月に成立したばかりの停戦を事実上崩壊させました。この紛争がすでに120ドル超えを一度記録している以上、90ドル接近は「起こるかもしれない特別な事態」ではなく「この相場が一度通った道」です。

一方で、トランプ大統領自身が価格下落を見込む発言をしており、OPEC+の増産姿勢も残っています。原油が再高騰するかどうかを断定することはできません。私たちが読者に渡したいのは予言ではなく、判断基準です。タンカー攻撃の再発有無、イラン産原油制裁の運用強化、米軍拠点への報復継続、そしてホルムズ海峡の正式な封鎖宣言──この4つが重なるほど、90ドル、さらには120ドル以上への再接近が現実味を帯びます。逆に、この4つが後退すれば、価格は78〜80ドル前後で頭打ちになりやすいというのが、現時点の整理です。

最終判断の分岐点

上昇シナリオ:タンカー攻撃の再発、米軍拠点への追加報復、イラン産原油制裁の強化、ホルムズ海峡の通航悪化が重なる場合、原油は90ドル接近を試しやすくなります。

下落シナリオ:追加報復が限定的で、通航正常化とOPEC+増産が確認されれば、78〜80ドル台で上値が重くなる可能性があります。

MS FINANCIAL PRESSの読み方

この記事の結論は「原油は必ず90ドルへ向かう」という予言ではありません。重要なのは、どの材料がそろえば上昇シナリオが強まり、どの材料が後退すれば反落しやすいのかを分けて見ることです。

地政学リスクは見出しだけで判断せず、原油価格、通航状況、米金利、ドル円、日本の物価への波及を同時に確認する必要があります。

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※掲載内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。

FAQ|よくある質問

米国とイランの停戦はなぜ崩壊したのですか?

7月7日にイランがホルムズ海峡で商船3隻を攻撃したことがきっかけです。米国は同日、イラン国内80カ所以上に再攻撃し、イラン産原油の販売許可も撤回しました。イランは翌日、バーレーンとクウェートの米軍拠点85カ所への報復攻撃を発表し、トランプ大統領は「停戦は終わった」と述べています。

今回の攻撃は今年初めての衝突なのですか?

いいえ。今回は2026年2月28日に始まった米国・イスラエルとイランの戦争の再燃です。開戦直後の3月にはホルムズ海峡の封鎖懸念から原油が120ドルを超えており、6月17日の停戦覚書によって一時沈静化していました。

原油価格は90ドルまで上がる可能性がありますか?

直近ではブレント原油が78ドル前後、WTIが73〜74ドル台まで上昇しています。攻撃と報復の連鎖が続けば90ドル接近が現実的なシナリオとなり、日本総合研究所の試算では、戦闘再開時のリスクシナリオとして150ドルという水準も示されています。

日本にはどのような影響がありますか?

ガソリン価格や電気代、物流費、食品価格への波及に加え、原油高が貿易収支を悪化させることで円安圧力にもつながります。第一生命経済研究所の試算では、原油が90〜99ドル程度まで上昇した場合、国内消費者物価を年間ベースで0.6〜0.8%程度押し上げる可能性があるとされています。

投資家は何を見ればよいですか?

原油価格そのものに加え、タンカー攻撃の再発有無、イラン産原油制裁の運用状況、米軍拠点への報復の継続、米金利とドル円の動きを併せて確認することが重要です。78〜80ドル、90ドル、120ドルという価格帯のどこで推移するかが判断の目安になります。

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