日本国債の買い建ては時期尚早?|日米金利差と需給から読み解く—2026年末「真の買い場」と機関投資家の戦略

2026年の年明け早々、金融市場では「日本国債(JGB)の押し目買い」を推奨する声が一部で聞かれます。日銀の利上げ警戒感から10年債利回りが上昇し、表面的な利回りに魅力が出てきたというのがその根拠です。
しかし、結論から申し上げます。「今、米国債(仮)から日本国債へ資金をシフトするのは時期尚早」です。
表面的な金利上昇だけに目を奪われると、この先に待ち構えている「需給の悪化」と「金利差の罠」に足元をすくわれることになります。プロの機関投資家が注目しているのは、単なる利回り水準ではなく、日米の金融政策がクロスするタイミングと、財務省・日銀の裏側にある動きです。
本記事では、なぜ日本国債の買い場がまだ先なのか、そしてなぜそのターゲットが「2026年末」になるのか。ファンダメンタルズ分析に基づき、個人投資家が今取るべき戦略を解説します。
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※投資は、必ず自己責任の元で行なってください。
- 1. 日米金利差2.0%の壁|米国債からの乗り換えコストが見合わない現実
- 1.1. 絶対的な利回り差による機会損失
- 1.2. 為替ヘッジ後の実質利回り
- 2. 「最低半年」は様子見が必要|日米政策変更のタイムラグ
- 2.1. 米国の利下げペースと日本の利上げペースのズレ
- 2.1.1. トレンド転換の条件
- 3. 需給の死角|財務省の「必死の営業」と日銀の「売り出し」が示すもの
- 3.1. 日銀という「クジラ」の撤退(QT)
- 3.2. 財務省による海外勢への営業攻勢
- 4. 2026年末が「買い場のタイミング」となるシナリオ
- 4.1.1. Point!
- 4.1. 【Check Point!】今は動かず、虎視眈々と好機を待て
- 4.1.1. 本記事の要点
- 4.1.2. 著者紹介
日米金利差2.0%の壁|米国債からの乗り換えコストが見合わない現実
現在、米国10年債利回りは約4.15%前後、対して日本国債(10年)は2.15%近辺で推移しています。この単純な数字の差(スプレッド)は約2.00%です。
一部の市場参加者は「日本の金利が上がったから魅力的だ」と言いますが、グローバルな資金運用を行う投資家の視点に立てば、この判断は全く異なります。なぜなら、そこには「機会損失」と「ヘッジコスト」という2つの壁が存在するからです。
絶対的な利回り差による機会損失
単純に考えて、リスクフリーレートに近い国債運用において、2.15%の日本国債を持つことは、4%超のインカムを生む米国債を持つ機会を捨てることを意味します。この2%の差を埋めるには、今後日本国債の価格が劇的に上昇(金利が低下)する必要がありますが、日銀が利上げ方向にある中で、短期的なキャピタルゲイン(価格上昇益)を期待するのは矛盾しています。
為替ヘッジ後の実質利回り
また、海外投資家や国内の機関投資家が通貨をまたいで債券投資をする場合、「為替ヘッジコスト」を考慮する必要があります。日米の短期金利差が依然として大きいため、ヘッジコストは高止まりしています。
つまり、米国債から日本国債へ乗り換える際、為替リスクを排除しようとヘッジをかければ、日本国債の実質利回りはさらに目減りし、投資妙味は皆無となります。投資家が本気で「JGBへの大移動(グレイト・ローテーション)」を起こすには、このスプレッドがもっと縮小する必要があります。
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「最低半年」は様子見が必要|日米政策変更のタイムラグ
投資の世界では「頭と尻尾はくれてやれ」と言いますが、現在の日本国債市場に関しては、まだ「頭(天井)」さえ見えていない可能性があります。私が「乗り換えを検討するにはまだ早い」と考える最大の理由は、日米の中央銀行のスピード感の違いにあります。
米国の利下げペースと日本の利上げペースのズレ
米国(FRB)の利下げ期待は高まっていますが、インフレの粘着性を考慮すれば、そのペースは緩やかなものになるでしょう。一方で、日本(日銀)の利上げも極めて慎重です。
この「緩やかな利下げ」と「慎重な利上げ」が交差し、投資家が「明らかに潮目が変わった」と確信を持てるまでには、構造的に時間がかかります。具体的には、以下の条件が揃うまで最低でも半年以上の期間が必要です。
トレンド転換の条件
- 米国のインフレ率(CPI/PCE)が目標値付近で完全に安定すること
- 日銀がマイナス金利解除後の「継続的な利上げ」を市場に織り込ませ完了すること
- 日米の短期金利差が縮小し、為替ヘッジコストが低下トレンドに入ること
これらが確認できない段階で動くのは「落ちてくるナイフ」を掴むようなものです。半年後、つまり2026年の夏以降になって初めて、市場環境の整理がつくと見るのが妥当です。
需給の死角|財務省の「必死の営業」と日銀の「売り出し」が示すもの
ファンダメンタルズ分析において、チャート以上に雄弁に事実を語るのが「大口プレイヤーの動向」です。現在、日本国債市場では、これまでの常識が通用しない需給構造の変化が起きています。
日銀という「クジラ」の撤退(QT)
長年、日本国債の最大の買い手は日本銀行でした。しかし、日銀は金融正常化に向けて保有国債の残高を減らす量的引き締め(QT)を進めています。日本銀行の公表データを見ても、買い入れ額の減額は既定路線です。
これは、市場から「最大の買い手」がいなくなり、逆に「売り手」に回ることを意味します。この巨大な売り圧力を、誰が吸収するのでしょうか?
財務省による海外勢への営業攻勢
ここに、非常に示唆に富む事実があります。財務省が現在、各国の投資機関に対して日本国債の購入を促す「営業(IR活動)」を強化している点です。財務省の国債IR情報を確認すると、海外投資家への働きかけを強めている背景が見え隠れします。
ビジネスの視点で考えてみてください。「良い商品(黙っていても売れる商品)」であれば、わざわざ必死に営業をかける必要はありません。財務省が積極的に海外へ売り込みをかけているという事実は、裏を返せば「国内勢(銀行・生保)だけでは、日銀が放出する国債を支えきれない可能性がある」という危機感の表れとも取れます。
供給過多(売り圧力)が懸念される商品を、今このタイミングで買う必要はありません。財務省の営業が一巡し、需給バランスが安定するまで待つのが賢明な投資家の判断です。
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2026年末が「買い場のタイミング」となるシナリオ
以上の分析から、日本国債への投資(または米国債からのスイッチング)を検討するベストなタイミングは、「2026年の年末」に向けてであると結論づけます。
なぜ2026年末なのか?その頃には以下のパズルが完成している可能性が高いからです。
Point!
- 米国金利の底打ちに近づく:FRBの利下げサイクルが底打ち間近となり、米金利低下による債券価格上昇の余地が限定的になる(米国債の旨味が減る)。
- 日本国債利回りピークアウト近辺:日銀の利上げとQTの影響が価格に完全に織り込まれ、利回りが天井(価格の底)近辺をつける。
- 機関投資家のポートフォリオ調整:多くの機関投資家が会計年度末や年末に向けて、リスク回避的なポジションとして割安になった日本国債を組み入れ始める。
投資において最も利益が出るのは、「誰もが悲観している時」に買い、「誰もが楽観している時」に売ることです。現在はまだ、日本国債に対して「利回りがついたから買える」という楽観と、「利上げが怖い」という警戒が入り混じっている時こそ、長期的な視点での「絶好のエントリーポイント」となるでしょう。
【Check Point!】今は動かず、虎視眈々と好機を待て
本記事の要点
- 現在の日米金利差(約2.0%)では、米国債から乗り換えるメリットは薄い。
- 日銀のQTと財務省の営業強化は、需給悪化のシグナルであり注意が必要。
- 本格的な資金シフトは、政策変更の影響が出揃う「半年後」以降に検討すべき。
- リスクリワードが最も良くなるのは「2026年末」に向けたタイミングである。
市場のノイズに惑わされず、今は米ドル資産での運用を継続しつつ、半年後の市場変化を冷静にモニタリングすることをおすすめします。
※本記事は一つの見解であり、特定の投資行動を勧誘するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。
著者紹介
元大手投資銀行(IBD)
リサーチ部門担当アナリスト
アナリスト歴12年
現エムズインベストメント投資情報局
リサーチ部門担当
専門は財務諸表分析、また、各国ファンダメンタルズ、マクロ経済を研究分析。
著:シューケル順子氏



